
先輩ママ・パパへのインタビューを通して「育児と仕事」をテーマに物語を紡いでいく特集『My BABY & Me』。
vol.13では、通信制高校のサポート校の運営などを行う株式会社教育アカデミーの代表取締役で、小6・小1の二人のお子さんを持つ望月さんが登場。生徒への向き合い方と子育てには、共通して大切にしている考え方があるといいます。
“一度選んだ道が違ったとしても、そこで終わりではない”
生徒たちに新しい選択肢を示しながら、自身も仕事と子育てに向き合う望月さんにお話をうかがいました。
―まずはじめに、「サポート校」とはどのような場所なのでしょうか?
通信制高校というと、自宅でオンライン学習をして卒業を目指すというイメージがあるかもしれませんが、私たちが提携している鹿島学園高校は、一人ひとりのペースに合わせて実際に通うことができる「キャンパス」を全国に多数用意しています。その学習支援施設が「サポート校」です。
「週に2日だけ通いたい」「学業以外の好きなことに時間を割きたい」など生徒の一人ひとりの希望に合わせた柔軟な通い方ができるのが特徴です。単位の認定などは鹿島学園高校が行い、私たちサポート校は日々の学習支援や生活のケア、進路遭難など、生徒の身近なところでサポートをする役割を担っています。

―どのような生徒さんが教育アカデミーに通っていますか?
本当にさまざまです。多いのは一度全日制高校に入学して、学校が合わなかったり、通い続けることが難しくなったりして転校してきた子です。学校に足が向かなくなった子、家庭環境が複雑で勉強に専念することが難しい子もいます。
でも、必ずしもネガティブな理由だけではありません。例えば、進学したい大学が明確に決まっていて、「学校で全員が同じ授業を受けるより、自分の目標のために時間を使いたい」と転校してきた生徒もいました。その子は自分で受験勉強に時間を使い、希望していた大学に合格していきました。
通信制だからこそ、自分の目的に合わせて時間を使える。いろいろな事情や目的を持つ子を受け入れられる柔軟さは、今の社会に必要だと感じています。
―どのような経緯で教育アカデミーに関わっているのでしょうか?
父の会社を継いだ形になるのですが、8年くらい前かな、それまでは百貨店で宝飾品の外商営業をしていました。本当に全然違う世界です。当時は夜8時まで働くこともありましたし、土日も仕事。子育ては夫に頼りっきりな状態になっていたので、「この働き方を続けるのは難しいな」と転職を考えていました。
ちょうどその頃、父に「よその会社に行くくらいなら、うちでやらないか」と声をかけられたんです。
―最初から社長候補として入社されたのでしょうか?
いえ。最初は身分を明かさず、いちスタッフとして入りました。
―どのタイミングで「社長の娘です」と公表したのでしょうか?
当時は私は8校あるうちの1校のキャンパス長のような立場だったので、職場で父と一緒になるという機会は少なかったんですが、全体会議とか、たまに一緒になった時に、父が「ちょっと、あやちゃん」とか声をかけてくるんですよ(笑)。周りも「アレ?」ってなって。それで「もう、無理かな」ということで1年後くらいに「実は娘で、これから会社を任せていこうと思っている」と父が発表したような形です。

そこから4年ぐらいは父が社長として一緒にやっていたんですけど、4年ほど前に株式会社の代表取締役を引き継ぎました。ただ、「教育アカデミー高等部」という事業体については今も父が代表で、私が副代表という形です。
―社長という立場での仕事と子育ての両立は本当に大変だと思うのですが、どのように両立しているのでしょうか?
夫はもちろんですが、両親の存在も大きいです。会社を父から引き継ぐときも、「会社は私がしっかり守るから、私の家庭をサポートしてほしい」とお願いして、両親にすぐ近くに引っ越してきてもらいました。
子どもが家に帰る時間には、おばあちゃんがいてくれる。そうでなければ、子どもたちはずっと鍵っ子になっていたと思います。
夫とも、どちらかの仕事だけを優先するのではなく、お互いの仕事を尊重するようにしています。子どもの送り迎えも、そのとき動ける方がやる。料理を私がしたら片付けは夫がする。完全ではないですけれど、できるだけ対等でいようとしています。

―ご自身の子育てにおいて大切にしていることはありますか?
子どもは二人いるんですが、同じように育てていても性格がまったく違う。それを見ていると「性格を親が思った方向に持っていくのは難しいな」と感じますね。なので、「つまずいてもいいんだよ」「その道が違ったら、軌道修正すればいいんだよ」とマインドの部分を伝えるようにしています。
今、上の子は本人の希望で中学受験に挑戦しています。失敗する可能性も、実際に入ってみて合わない可能性だってあります。でもそのとき、「じゃあ違う道を探そう」とできればいいなと思います。
―ここで、お子様との思い出のアイテムをお持ちいただく恒例の企画なのですが、見せていただいてよろしいでしょうか。
長男が小さい頃、母が毎月、本を送ってくれていたんです。0歳の頃から、自分宛てに本が届く。それがすごく楽しみだったみたいで、長男にとって本は友達のような存在でした。その中のお気に入りの一つです。

怖がりな男の子が「力強いライオンが近くにいれば、怖くないのに」と思ったことをきっかけに現れるライオンといっしょに、少しずついろいろなことに挑戦できるようになるお話なのですが、長男も不安が強くて、新しいことに挑戦するのが得意なタイプではありませんでした。だから私もその物語になぞらえて、ライオンのぬいぐるみを探して渡したんです。「このライオンがいるから、いろいろなことにチャレンジしてごらん」って。このライオンとは、小学6年生になった今でも一緒に寝ています。

仕事をしていると、子どもと一緒に過ごせる時間が少ないことを気にしてしまうこともあります。でも、子どもの心を育てるのは親だけじゃないんですよね。祖父母だったり、先生だったり、友達だったり、本だったり。いろいろな人やものに支えられながら、子どもの心は育っていくのだと思います。
―「つまづいても軌道修正できる」「子どもの心を育てるのは親だけではない」といった考えにはすごく共感しました。そうした思いは生徒や保護者に寄り添ういまのお仕事にも影響していますか?
そうですね。例えば、お子さんが不登校だったりすると、自分を責めてしまう親御さんもいらっしゃいます。そういうときは「あまり自分を責めないで」というお話をします。
私たちの役目は、生徒を決められた道に戻すことではないと考えています。その子が心地よく力を蓄えられる場所をつくり、次の道を一緒に探して、最終的には自分で歩いていけるように送り出すことだと思っています。
―子どもたち、そして保護者にとってのセーフティネットのような役割を果たしているんですね。子育て中の親御さんにとって、心強いと感じました。
そう感じてもらえると嬉しいです。
うちの生徒には、入ってくるときには、自信をなくしている子が本当に多いんです。「もういいよ」「俺の人生、詰んだから」みたいなことを言う子もいます。でも私は、「全然終わりじゃないよ」「むしろ、せっかく通信制にきたから全日制でできないことをいっぱいやろう」と伝えます。実際、通信制だと3,4か月日本にいれば、ほかの期間はずっと海外留学したりといったことも可能です。使える時間という点ですごくアドバンテージになるんですね。なので、「通信に来たからこんな自分ができた」「早めに自分の道を見つけることができた」といったふうに、通信制を出てるっていうことが、その後の人生でプラスになったと捉えられるようになってほしいと思っています。

―やりがいを感じるときは、どういったときですか?
そうやって最初に後ろ向きだった子が、少しづつ元気になって、次のステージに羽ばたいていくのを見送るときですね。「無理せず、自分らしく過ごせた」という時間を通じて、少しずつ心が元気になっていく。私たちはキャンパス合同で数百人規模で体育祭や卒業式なんかも盛大にやります。最初は「友達いらない」「人付き合いしたくない」とか言ってた子も、みんな元気になってくると、そういったイベントにも積極的に参加します。みんなキラキラしているんですよ。
―最後に、ほかに生徒やご自身のお子さんに伝えていきたいことや、大切にしていきたいことはありますか?。
「間違えちゃだめ、間違えちゃだめ」という中で育つと、人は挫折をクリアしにくいものです。違う道があるっていう方向に方針転換をしにくいんです。なので大人が、いろんな選択肢を示してあげられるっていうことが、子供たちにとっては大事だと思っています。

あと、いまの子どもたちは人に頼ることが苦手な子が多いと感じています。でも社会に出てからも、誰にでも得意なこと、苦手なことはあるものです。できないことは誰かに助けてもらい、自分のできることで誰かを支えればいい。そういったことを受け入れて、当たり前にできる、それも強さだと思います。そうしたことを生徒たちにも、自分の子どもにも伝えていきたいですね。


