
先輩ママ・パパへのインタビューを通して「育児と仕事」をテーマに物語を紡いでいく特集『My BABY & Me』。
vol.11では、「モビリティジャーナリスト」という一風変わった肩書きを持つ楠田さんにお話をうかがいました。専門である交通に関する課題や、それに留まらない社会課題と向き合いつつ、子育てという新たな“プロジェクト”にも着手した楠田さん。
家庭を「会社の共同経営」、結婚を「M&A」と例える独自の視点や、トライアスロン世界大会へ参加したり、産後2日めから仕事を再開したりとパワフルさが印象的でした。
―まずは「モビリティジャーナリスト」というお仕事の内容についてお聞かせください。どういった分野が専門で、業務としてどういったことをされているのでしょうか?
例えば、本にも書いたような観光と交通のことであったり、高齢者の免許返納後の問題、自転車を使った通学の安全性など、交通と社会についてのさまざまな課題を扱っています。それらについて執筆したり、企業や自治体のプロジェクトに参加したり、検討会に参加したりといった感じです。モビリティ関係のイベントの司会をすることもあります。

―いまはフリーランスという形でしょうか? 企業に所属しているのでしょうか?
属さずに一人でやっていますが、一応、株式会社にしてやっています。
―そうなると、出産や子育てはしやすいものですか? もしくは逆に大変でしょうか?
雇用保険がないので、休んだ分だけお金が入らないことになります。そう考えると雇用されている状態より大変かもしれません。
あとは出産にあたっては、せっかく積み上げてきたものをお断りしないといけないので、「次は声をかけてもらえないかもしれない」っていう不安がどうしてもあって、なかなか結婚や出産に踏み出せないという状態にはなりやすいのではないかと思います。
―そういった方の背中を押すようなインタビューになればと思います! 独立してお仕事をやっていくには、知識も人脈も大切だと思うのですが、どうやって培っていったのでしょうか?
業界誌を作る会社で働いていたので、取材やお仕事で出会う人からお話を聞いたりして…という部分もありましたし、独立後にMBA(経営学修士)のスクールに通ったんですが、それで学んだことを生かしてこうなったという感じです。
―MBAも取得されているんですね。
そうですね。独立後なので、雇用保険がない状態(笑)で頑張って取りました。学んだ知識やスキルもそうですが、効率化やマネジメントの考え方はすごく今の仕事に役に立っていると思います。
―すごいガッツですね。しかも今回紹介してくださったアスレチックトレーナーの平井さん(vol.7に登場)から、トライアスロンもやられていると聞きました。
そうですね、出産前からやっていて、いまもこのあたり(※編集注:皇居周辺)をランニングコースとして走ることもあります。
―すごいですね。トライアスロンはどういった経緯で始められたのでしょうか?
2019年くらいだったかな? 40歳が目前に迫るなかで、まだ結婚も出産もしてなくて「このままどちらも諦めなきゃならないかも」「そうなったときに何か心の支えがほしい」と思ってスポーツに取り組みだしたんです。最初は知人に山登りに連れて行ってもらって、そのうちほかにも何かないかなと探すうちに、当時ちょうど自転車に関する仕事を抱えていたというのもあって、「じゃあ次はトライアスロンだ」みたいな感じで始めました。2023年にはハーフIRONMAN 70.3シリーズ(※注:スイム1.9km、バイク90km、ラン20.1km)世界選手権大会に参加したのを皮切りに、先日はアイアンマンジャパンみなみ北海道に参加し、スイム3.8km、バイク180km、ラン42.2kmを完走しました!

産前産後アスリートサポート「WIS」のアスレティックトレーナー、公認スポーツ栄養士、助産師、理学療法士のトータルサポートとトライアスロンスクール「アリーディ」のコーチのフルサポートにより、無理なく安全な完走ができました。
―すごいですね。お仕事にトライアスロンにと精力的に活動されていますが、ご結婚とご出産はどういったタイミングだったのでしょうか。
何かきっかけがあったというわけではなく、ずっと結婚はしたかったし子供も欲しかったので、マッチングアプリとかも結構やっていたのですが、いまひとつで。それで一昨年、しっかり課金して結婚相談所に登録してみたらさくっと結婚相手が見つかったという感じです。昨年11月に出産しました。
―「さくっと」(笑)。ご家庭や育児において大切にされていることやルールなどはありますか?
家庭も会社やプロジェクトとある意味同じで、「誰を共同経営者に選ぶか」「どうコミュニケーションをとっていくか」「どうタイムマネージメントするか」というものだと考えています。夫と結婚するときも、「お互い一人でも生きていけるけど、結婚するからには、お互い今まで以上にやりたいことができて、応援し合えるといいよね」「これはM&Aだね」とか話していました(笑)。そして子供が生まれて新たなプロジェクトが立ち上がって…みたいな感覚の中で日々生活している感じです。
―恒例の企画として、お子様との思い出の一品を見せていただいています。昨年ご出産ですと、まだ「思い出」というには最近の出来事かと思いますが、何かありますか?
この「姉妹」のツーショット写真です。

妊娠中に単著で本を書き始めたんですよ。産後にも頑張って書き続けて、産後少ししたくらいで書き上げて。本のほうは結構難産でした(笑)。妊娠期間と出産の期間が重なっていたので、書籍と娘が“姉妹”みたいな感覚があるんです。それで書籍ができたときに撮りました(笑)

―すごいエネルギーですね。ゆっくり休む間もなく..?
産後は1日しか休んでいません。2日目からは仕事していました(笑)。
―お子様が産まれて、仕事への向き合い方に変化はありましたか?
視点はものすごく変わりました! 出産直後に「お出かけ大変だな」「どこへも行けなくなったな」と思って。ベビーカーを持って電車に乗ろうと思っても、階段やエスカレーターは崖にしか見えないし、じゃあエレベーターに乗ろうと思ったら「エレベーターは南口です」とか書かれてて。「南口ってどれ?」みたいな。しかもやっとエレベーターが来たら人がいっぱいで乗れなかったり…「子育てと移動」ということについて深く考えるようになりましたね。
―新たな課題を見つけられたのですね。そういった女性だからこそ強く感じるというな課題が認知され、社会づくりに反映されるのはよいですね。
そうですね。交通の分野での子育ての取組みをまとめて、研究や政策が発展できるような情報発信のお手伝いができたらいいなと考えています。

―お仕事以外の部分では、出産前後でご自身の気持ちの面で変化はありましたか?
「結婚できるのか」「子どもを産めるのか」ということ自体が漠然とした悩みとしてあったので、それが解消されたことが大きいです。すごくシンプルになりました。いまは大きな悩みとかもないですね。お互いのやりたいことを尊重し合える結婚相手と2馬力で家庭を支え合うことができていて、親族仲も良好ですし、なにより子どもはとにかくかわいいので。
―最高ですね。昨今、SNSや報道などで、出産・育児に対するネガティブなイメージや「こういう人しか子供を持ってはいけない」といった言説が広がりすぎていると個人的には危惧しています。ぜひ、これから出産を迎える方や、子どもを持つことを考えている方に向けて、ポジティブな側からのメッセージをお願いします!
「毎日にハリがないな」と感じている人はどんどん産んだほうがいいと思います。生命という神秘体験を毎日味わえるし、「産んでよかった」「かわいい」と毎日思わせてくれます。
40代でも体さえ作っていれば全然産めるので、特に年齢を気にして二の足を踏んでいる方には「諦めるのはもったいないよ」と伝えたいですね。



